コンプレックスとは限らない
先日のこと。
長男の塾へ、次男を連れて迎えに行った。次男は、友達と一緒に降りて来た長男を見つけるなり駆け寄っていった。
しばらくして、長男がにこにこしながら近くに来て
「みんなが初めてぼくの弟を見た感想、」
という。なになに、というと、
「身長差がないって〜!」
と言って、また友達のほうに戻っていった。
そういえば、先日も、同じようなことがあった。
ボディケアの専門家のかたに会う機会があり、「こうするともっと背が伸びますよ」というお話にわたしがくいついた瞬間、横にいた長男が「あ、でもぼくは、小さいのがむしろ魅力だと思ってるんですよね」と言ったのだ。
そこだけやけに敬語で「ご親切はいたみいりますが」みたいなトーンだったので、わたしたちも「あ、余計なことでしたねすみません・・・」となり、一方でそのあと(でも本当はどう思っているのかなあ)とちょっと気になっていたのだった。
あれ、やっぱり本当だったんだな、と思った。
たしかに本人から、「背が低いのが気になっている」と聞いたことは一度もない。「言わないけど、本当は気にしているだろう」と、わたしが思い込んでいたのだ。
そういえばわたし自身も小さい頃から低身長だったけど、そのことを気にしたことはない。それなのにそんな風に思い込んでいたのはたぶん、彼が男の子だからだ。
背は低いよりも高いほうがいいと思うに決まっている、とか、男の子は特にそう思うはず、とか、自分の中にある勝手な思い込みに気づかされる、ふたつの出来事だった。
ちなみに長男は、友達に「チビ」と言われてよく怒っている。でもあれはあくまで、相手の失礼さとしつこさについて怒っているのだろう(そういえばよく「しつこい!」と言っている)。「身長差がない!」みたいなニュートラルな驚きの言葉だったら普通に受け取るし、一緒に面白くなってしまう、そういうところが彼にはある。他人の認知と自分の認知がしっかり区別されている。
背が低いことが、思春期前期の男の子にとってコンプレックスになるとは限らない。そのことを他人に指摘されたって、それがコンプレックスにつながるとも限らない。「自分は自分」がしっかりしている息子の世界は、自由で広々としているな、と思う。